1月27日、テレビ国際放送「NHKワールドTV」の特集番組『JOHNNYS'World:Top of the J Pops(ジャニーズ・ワールド:トップ・オブ・ザ・Jポップス)』に、メディアに姿を見せないことで知られるジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長が出演しました。 1964年の「初代ジャニーズ」のレコードデビューから50年以上にわたり、日本のポップカルチャーの象徴的なアイドルを世に送り出してきた喜多川社長。昨年は「最も多くのチャート1位獲得アーティストを生んだプロデューサー」として、3つ目のギネス世界記録認定を受けました。 現在日本を代表するアイドルといえばSMAPや嵐をはじめとするジャニーズ勢と、秋元康さんプロデュースのAKB48でしょう。共に幅広い年代に愛されているアイドルグループですが、ジャニーズとAKBには決定的な違いがあるようです。 ジャニーズの軌跡を3人の論客が語る書籍『ジャニ研!』。論客のひとりである評論家・音楽家の大谷能生さんは同書の中で「AKBには"卒業"があるけどジャニーズにはそれがない」と指摘。それを受けて、ライター、DJ、漫画家と様々なステージで活躍している矢野利裕さんは次のように語ります。「合宿所とか、学校をモデルにしたシステムもなくはないですけど、全体として学校色はあまり強くない。それに対してAKBは、みんなで制服を着たりして、明らかに"学校"のコスプレをやっていますよね。学校の比喩だから、卒業のときを必ず迎えるっていう含みもあって、刹那的なアイドルであるという印象を強く打ち出しています」(矢野さん) またユースカルチャー研究で活躍している速水健朗さんは、卒業のないアイドル育成の基本方針として「ジャニーさんはジャニーズジュニアの少年たちにダメ出しをしない」と言います。「(オーディションを通ったばかりの少年たちに)演技をさせると、大人の基準でいえばみんな下手なんだけど、それをだめとは絶対に言わないんだって。それは逆に言うと、背伸びした演技をする子はだめで、年齢相応のことをやってもらうという意味でもある。だから卒業させない」(速水さん) "そのまま"を大事にすることで、個々のオリジナリティが高められSMAPのような国民的アイドルグループを生み出すことができるとのこと。また、こうした緩やかな長い育成システムがKis-My-Ft2のような10年近くのジュニア時代を過ごしてからデビューするようなグループを生むようです。"そのまま"を大事にする余裕こそが、長年の蓄積を持つジャニーズならではの「ノウハウ」といえるのではないでしょうか。
『ジャニ研!: ジャニーズ文化論』 著者:大谷能生,速水健朗,矢野利裕 出版社:原書房 >>元の記事を見る
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