俳優・松田翔太(27)と元AKB48の前田敦子(21)が、香港を代表する俳優トニー・レオン(50)主演の映画「一九〇五」(黒沢清監督、来秋公開予定)に出演することが9日、発表された。1905年の横浜を舞台に国境を超えた友情を描く同作は、すでに香港、台湾での公開が決定。さらに全世界での配給に向けてプロジェクトが進められている。松田と前田にとっては"世界デビュー"が約束された形となった。
若手俳優として着実にキャリアを積み上げている松田、「AKB48」を卒業し、夢だった女優への道を本格的に歩き始めた前田が、香港のトップ俳優とタッグを組み、世界を目指す。
「一九〇五」は、黒沢監督が初めて挑む外国語作品。09年に香港で開催された「アジア映画賞」で、黒沢監督の「トウキョウソナタ」が大賞を受賞した際、トニーと言葉を交わしたことが、2人の出会いだった。
ひかれ合うものを感じた2人はその後、トニーが来日した際に話し合いの場を持ち、企画を温めてきた。それが作品として結実。「あらゆる瞬間に至るまで、この貴重な体験を楽しみたいと思っています」と、トニーはコメントした。
松田が演じるのは、中国からやって来た高利貸し・ヤン(トニー)が追う5人の男を、別の目的でマークする任務を持つ国粋主義者・加藤。流ちょうな中国語を話せる、という設定のため、現在は猛勉強中。「脚本を頂いた時にゾクゾクとしました。今の自分に自信を持って、撮影を楽しみたい」とクランクインの日を待ち構えている。
一方、AKB卒業後初の映画出演となる前田は、2人の男をとりこにし、人生に影響を与えていく「運命の女」宮子役。カタコトながら、松田と同じく中国語にも挑戦する。「女性のあらゆる魅力を持っている宮子を、全力で演じたいと思います」と、意気込みを見せている。
トニーはアジアでの人気はもちろん、出演作「悲情城市」が89年のベネチア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲得したり、02年の「インファナル・アフェア」がマーティン・スコセッシ監督の手によって「ディパーテッド」としてハリウッドでリメークされるなど、世界的知名度を誇っている。現在、海外公開が決定しているのは香港、台湾だけだが、黒沢監督の人気と相まって、欧米での公開が実現する可能性は高く、松田と前田の名前が世界に知られる可能性が広がる。
クランクインは11月。撮影は日本と台湾で行われ、台湾にはオープンセットも組まれる予定になっている。
◆黒沢 清(くろさわ・きよし)1955年7月19日、兵庫県生まれ。57歳。80年、「しがらみ学園」が「ぴあフィルムフェスティバル」に入賞して注目される。83年、ピンク映画「神田川淫乱戦争」で監督デビュー。97年の「CURE」で世界的知名度を得る。00年、「回路 Pulse」でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞、08年の「トウキョウソナタ」で同映画祭のある視点部門審査員賞を受賞。「リアル~完全なる首長竜の日~」が来年公開予定。
◆映画「一九〇五」 5人の男に貸した金を取り立てるため横浜にやってきた高利貸し・ヤンは、日本人の若者・加藤と出会う。国粋主義者のグループ「報国会」のメンバーだった彼は、中国人革命家を強制送還する任務を言い渡されていたが、革命家はヤンが追う5人のことだった。お互いの中に同じものを見た2人は、国境を超えた奇妙な友情を持ち始める。そんな時、ヤンの前に小動物のような愛らしさと律義さを持つ娘・宮子が現れた―。