2012年10月19日金曜日
話題の“社会現象アニメ”『魔法少女まどか☆マギカ』とAKB48の共通点とは?
「今までの魔法少女アニメとは、全然違うらしい」
そんな評判が広がり、昨年1月の放送開始直後から話題になった『魔法少女まどか☆マギカ』。
かわいらしい絵柄と"魔法少女もの"というイメージにそぐわないダークな世界観は、アニメファンにとどまらない幅広い視聴者を獲得。
"社会現象"といわれるまでになった。
そんな『魔法少女まどか☆マギカ』の総集編が、現在劇場版として前後編で公開されている。
この2000年代最高のアニメの魅力を、現役大学講師を務める学者芸人・サンキュータツオ氏に語ってもらった。
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普段アニメを観ない人は、このかわいい絵を見て「ただの萌えアニメでしょ」っていう先入観を持つかもしれません。
でも、そう思った時点で、すでに演出の意図にだまされているんです(笑)。
このかわいいキャラたちが展開する意外なほど重いストーリーに触れたとき、そのギャップにあなたはヤラれるでしょう。
僕は、ドラマ『家政婦のミタ』を面白いと思った人にこそ、このアニメを観てほしいと思っています。
ミタさんって、まるで『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイのような、アニメ的なキャラクターでしょう? しかも、1話完結のストーリーの組み立て方も、実はこれまでのアニメ的な文法をかなり踏襲している。
そして、『まどか☆マギカ』は、そんな過去のアニメ的なキャラクター造形であったり、ストーリーの文法から、一歩先へ踏み出しているんです。
例えば、暁美ほむらのようなすごく記号的なキャラクターがいる一方で、美樹さやかのような複雑な内面を持つ少女が描かれていますよね。
僕は彼女のようなめんどくさい女が大嫌いなんですが(笑)、観ているとつい「俺が助けなきゃ!」と思ってしまう。
非常に魅力的な人物造形になっていると思います。
それから、従来の魔法少女ものと違って、魔法少女になるための"代償"に重きを置いた点も、非常に現代的だと思います。
魔法少女になるということは、その代わりに過酷な運命を背負うことでもあります。
それは、例えばAKB48のメンバーが、アイドルとして輝くために恋愛を禁止されてしまうのとよく似ています。
よくよく考えれば、昔からあったはずのそんな内幕や"ホンネ"の部分をさらけ出したドキュメンタリー性が、『まどか☆マギカ』とAKB48に共通する部分だと思いますね。
また、秋元康さんが"やすす"とキャラクター化して呼ばれているのも、すでにAKB48がアニメ的になっている証拠かもしれません。
その意味でも、秋元康=キュゥべえといえる(笑)。
とにかく、観たことのない人には「一回観て!」としか言えません。
アメリカのドラマにも引けをとらない緻密な脚本と凝った演出に、あなたは気持ちよく裏切られ続けるでしょう。
それはもう、魔法のごとしですよ(笑)。
(取材・文/西中賢治)
●サンキュータツオ
1976年生まれ。
漫才コンビ・米粒写経のツッコミ担当。
一橋大学などで講師を務める学者芸人にして、重度のアニメオタク。
【http://39tatsuo.jugem.jp/】