◆競泳 日本選手権最終日(14日、新潟県長岡市・ダイエープロビスフェニックスプール) ロンドン五輪男子200メートル背泳ぎ銀メダルの入江陵介(23)=イトマン東進=が同種目決勝で、萩野公介(18)=東洋大=の6冠を阻んだ。1分55秒50で萩野を0秒61上回り、7連覇を達成した。記録が振るわずに厳しい表情を浮かべたが、メダリストの意地を見せた。世界選手権(7月開幕・バルセロナ)までに復調を目指す。また史上初の5冠を成し遂げた萩野は、世界選手権で8種目に出場する可能性が浮上した。
入江は序盤からレースを引っ張った。50メートル、100メートルと、ともに1位。150メートルのターンで萩野に先行されたが、すぐに抜き返した。トップでゴール板をたたくと、「良かった点? 特にない」と吐き捨てるように答えた。喜びを表さない表情にメダリストのプライドが見えた。
12日の100メートル背泳ぎで萩野に敗北。ロンドン五輪で3位の種目だけに大きな波紋を呼んだ。その後、萩野が5冠まで積み上げたことで再対決が注目された。「何とか6冠を阻止してくれと、みんなから頼まれた」。重圧に打ち勝ち、18歳の新鋭にリベンジした。
記録自体は低調で、昨年の五輪当時より1秒72遅い。年明けからオーストラリアに留学。日本人家庭にホームステイしながら、16年リオデジャネイロ五輪に向けて再出発した。ただ、すぐに気持ちは切り替えられなかった。「正直、今の自分は心から水泳が好きとは言えない」。葛藤の中、連覇は7に伸ばした。
銀2個、銅1個を獲得したロンドンは万全とは言えなかった。大会前の6月に左肩を負傷。自然と泳ぎが崩れた。当時、指導していた道浦健寿コーチは精神面への影響を考慮し、最後まで本人に指摘しなかった。苦しい状況下で最初の100メートル背泳ぎを3位と乗り切った。直後、入江は号泣し、道浦コーチも涙が止まらず、トイレに駆け込んだ。
プレッシャーに打ち勝ってメダルを手にしたが、天才と言われた男が最高潮なら色は変わっていたかもしれない。今も理想の泳ぎができずに苦しむが、視線は世界に向きつつある。「萩野くんはAKB48好きだし、今後AKBでいう"センター"に立ってくれると思うので、僕は後ろの方で頑張りたい」。謙虚に話すが、世界選手権での勝利だけは譲らない。
◆競泳世界選手権代表選考 個人種目の代表は最大で2人まで選べる。原則として、日本選手権の決勝で日本水連が定めた派遣標準記録を突破し、2位以内に入った選手を代表とする。ただし、ロンドン五輪の個人種目でメダルを獲得した選手はその種目に限り、出場すれば最優先で選ぶ。枠が余れば別の基準で選考する場合もある。400メートル、800メートルリレーの代表は100メートル、200メートル自由形の結果で選考する。