AKB48まとめんばー

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2012年9月8日土曜日

『AKB48白熱論争』 アイドル論通じた現代日本的「近代の超克」



いまや"国民的"との形容さえ冠される人気アイドルグループ、AKB48。6月に行われた、ファン投票でシングル曲を歌うメンバーを選ぶイベント「第4回選抜総選挙」は、NHK総合のニュース番組で結果が報じられたほどだ。

このAKBに目下「マジで嵌(はま)っている」のが、『ゴーマニズム宣言』などで知られる憂国の漫画家、小林よしのり氏(59)。自ら責任編集長を務める雑誌『わしズム』で、いずれ劣らぬAKBファンの論客3人とひたすら語り合った2回の座談会を、一冊の本に再構成したのがこの本だ。

「みんなおしゃべりだし、早口。常に誰かがずっとしゃべっている感じだった」と座談会の模様を語るのは、担当した幻冬舎の志儀保博氏。先月25日に初版1万2千部でスタートし、2週間で4刷4万2千部を発行。予想を上回る好調ぶりに喜ぶ。

内容は、あとがきで社会学者の濱野智史氏がAKBをよく知らない読者に向け「この本を読んでAKBを分かった気になろうとしても無駄だ」と明言する通り、完全にAKBファン向け。特に他のアイドル集団とAKBを決定的に隔てるシステム「総選挙」の結果を受けた前半は、各自の"推し(支持)"対象の明暗を反映し、話者が口角泡を飛ばすさまが見えるような、異様な熱気に満ちている。

中盤以降、4人の熱いトークは化学変化を起こし、AKBを通じた現代文明論へ突き進んでいく。見出しを並べると「資本主義の権化が共同体を生み出すという矛盾」「アメリカ人は多神教的AKBを受け入れるか」「多神教的資本主義は日本を越えてどこまで広がるか」-。戦中の知識人の座談会「近代の超克」を思わせる大風呂敷は、ある種壮観だ。数十年後、2010年代日本の知的状況を知る際に、重要な資料になる一冊だろう。(小林よしのり・中森明夫・宇野常寛・濱野智史著/幻冬舎新書・882円)(磨井慎吾)